業種別ガイド

古物商・宅建業・建設業・人材派遣はバーチャルオフィスで許可が下りる?業法の「事務所要件」を一次情報で確認

※本サイトの記事にはアフィリエイト広告(PR)を含む場合があります


「バーチャルオフィスでは古物商・宅建業・建設業は登記できない」という説明を見かけることがあります。これは不正確です。**登記そのものは業種にかかわらずできます。**壁になるのは登記とは別の手続きである「業法上の許可・免許」で、そこには各業法が定める「事務所」の要件があります。

この記事では、宅地建物取引業法施行令、古物営業法の解釈運用基準、建設業法・同施行令、労働者派遣事業の許可基準という一次情報を実際に確認し、なぜバーチャルオフィスの住所だけでは事務所要件を満たしにくいのかを業種ごとに整理します。最終確認日はいずれも2026年9月17日です。

先に整理:登記の話ではなく、許認可の「事務所要件」の話

  • 登記:本店所在地としてバーチャルオフィスの住所を法人登記に記載すること自体は可能です。会社法・商業登記法上、業種を理由に登記を却下する規定はありません。
  • 許認可:宅建業・古物商・建設業・労働者派遣などの事業を始めるには、登記とは別に監督官庁の許可・免許・届出が必要です。その審査基準の中に、各業法が定める「事務所」の要件があります。

以下で確認する4業種は、いずれもこの「事務所」の要件が、単なる住所貸しであるバーチャルオフィスの形態と相性が悪い代表例です。ただし要件を満たす形態があり得るため、「一般的に満たしにくい」という書き方にとどめます。個別の可否は、この記事では判断できません。

宅地建物取引業(宅建業)

宅地建物取引業法施行令第1条の2は、同法第3条第1項の「事務所」を次の2種類と定めています(e-Gov法令検索・宅地建物取引業法施行令、2026年9月17日確認)。

  1. 本店又は支店(商人以外の者にあっては、主たる事務所又は従たる事務所)
  2. 前号のほか、継続的に業務を行なうことができる施設を有する場所で、宅地建物取引業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置くもの

国土交通省の「宅地建物取引業法の解釈・運用の考え方」は、この2号の「継続的に業務を行なうことができる施設」について、「宅地建物取引業者の営業活動の場所として、継続的に使用することができるもので、社会通念上事務所として認識される程度の形態を備えたもの」と説明しています(同解釈・運用の考え方 第3条第1項関係、2026年9月17日確認)。

さらに免許申請の実務では、事務所の所在地を明記した地図に加えて、「事務所のある建物の外観、入口付近及び事務所の内部(報酬額表及び宅地建物取引業者票が掲示されていることが確認できるもの)」を撮影した写真の提出が求められると同解釈・運用の考え方に記載されています。つまり審査の場面で、外観だけでなく内部の実体まで確認される仕組みになっています。共用の受付や郵便ボックスしかないバーチャルオフィスの形態は、こうした「事務所としての実体」の確認になじみにくいと考えられます。

古物商(古物営業法)

警察庁「古物営業法等の解釈運用基準」は、「営業所」について次のように説明しています(第5の1、2026年9月17日確認)。

「営業所」とは、人の営業の本拠であって、営業全般についての法律的事実的行為の責任の所在場所をいう。したがって、営業上必要な帳簿や商品を保管する事務所、店舗等を含めた意味である。

また、営業所ごとに選任する管理者について、「管理者は、それぞれの営業所等に常勤して管理者の業務に従事し得る状態になければならない」とも定めています(第12の1)。帳簿等の備え付けについても、電磁的記録で管理する場合は「各営業所等にプリントアウトに必要な機器等を備え付けておくことが必要」とされ、帳簿・商品の保管と管理者の常勤という2つの実体が、営業所ごとに求められる形です。

バーチャルオフィスは物理的な保管スペースや常勤スタッフの常駐を前提にしていない契約形態が一般的なため、この「帳簿・商品の保管」「管理者の常勤」という要件と相性が悪くなりやすいと考えられます。

建設業

建設業法第3条第1項は、二以上の都道府県に営業所を設けて営業する場合の許可権者(国土交通大臣)などを定めたうえで、「営業所」を「本店又は支店若しくは政令で定めるこれに準ずるもの」と定義しています(e-Gov法令検索・建設業法、2026年9月17日確認)。

この「政令で定める支店に準ずる営業所」について、建設業法施行令第1条は次のように定めています。

建設業法(以下「法」という。)第三条第一項の政令で定める支店に準ずる営業所は、常時建設工事の請負契約を締結する事務所とする。

つまり建設業法上の営業所は、見積り・入札・契約締結といった請負契約に関わる実務を継続的に行う場所であることが前提です。住所と郵便転送・電話代行のみを提供するバーチャルオフィスは、こうした「契約締結の実務を継続的に行う場所」としての実体を備えにくく、一般的には要件を満たしにくい形態にあたると考えられます。

労働者派遣事業

厚生労働省の「労働者派遣事業を適正に実施するために-許可・更新等手続マニュアル-」は、許可基準の中で事業所について次のように定めています(許可基準(ハ)事業所に関する判断、2026年9月17日確認)。

事業所について、事業に使用し得る面積がおおむね20平方メートル以上あるほか、その位置、設備等からみて、労働者派遣事業を行うのに適切であること。

条件として、風俗営業等が密集する等「事業の運営に好ましくない位置」にないことと、労働者派遣事業に使用し得る面積がおおむね20平方メートル以上あることの2点が挙げられています。この基準は「労働者派遣事業に使用し得る」専有スペースの広さを問うものなので、共用の住所・私書箱だけを提供するバーチャルオフィスの契約形態では、この面積要件を満たす専有スペースがそもそも存在しないケースが多いと考えられます。なお、事業所の独立性(他事業との区分の程度)について、この記事で確認できた一次資料の範囲では具体的な数値・基準文言は見当たらなかったため、その点は書きません。

この記事で扱わなかった業種について

冒頭で挙げた4業種以外にも、事務所要件のある許認可(旅行業・人材紹介業・貸金業など)は多数あります。今回は所管庁の一次情報で条文・解釈基準を確認できた4業種にしぼって扱いました。確認できていない業種について、この記事では可否に触れません。

まとめ:4業種の「事務所」に関する主な確認事項

業種根拠確認できた主な要件
宅地建物取引業宅建業法施行令1条の2、国交省解釈・運用の考え方継続的に業務を行える施設としての実体、事務所内部の写真提出
古物商古物営業法の解釈運用基準帳簿・商品の保管場所、管理者の常勤
建設業建設業法3条1項、同施行令1条常時、請負契約の締結業務を行う事務所であること
労働者派遣事業労働者派遣事業の許可・更新等手続マニュアル事業に使用し得る面積がおおむね20平方メートル以上

いずれも「絶対に不可」ということではなく、要件を満たす形態を用意できれば許可・免許につながる可能性はあります。ただし一般的な意味でのバーチャルオフィス(住所貸し・郵便転送・電話代行が中心のプラン)は、上記の実体要件と相性が悪いことが多いと考えられます。


この記事は一般的な制度の解説です。個別の判断は行政書士等の専門家や所管の窓口にご確認ください。当サイトは個別のご相談には応じていません。

参考にした情報

※本記事は情報提供を目的としたものです。制度・基準は改正される場合があるため、実際の申請にあたっては必ず所管庁の最新情報をご確認ください。